完結編を待ちつつ読みたい石ノ森萬画【完結編準備編】



『ドクターSF:巨人来る編』
★★★
(1965〜66年 中二時代)
竹書房文庫 『ギルガメッシュ』4巻/虫プロ商事(株) 虫コミックス『Sπ』1968年初版/等に収録


★ダイジェスト★

主人公のジロウたちは空き地で野球をしていたが、
空き地の隣の屋敷へボールが飛び込み、止む無くその中へ侵入する。
ジロウはそのGFのサナエとともに中にいた不審な連中に捕まり、
腕にマインドコントローラーを装着されてしまう。

一方、太平洋上では巨人が現れ、客船を襲い、船員や旅客たちに同様の
マインドコントローラーを装着していた。

その様にして「不審な連中」は仲間を着実に増やしていったが、
コントローラーで操られていたジロウ達の行動を不審に思った
横浜の田所刑事は彼らを警察に連行する。

鑑識の結果、その行動が機械によって操られたものだと判明するや、
その調査を開始しようと「屋敷」に踏み込むが苦戦。
しかしマッドサイエンティスト「ドクターSF」の助けで一味の1人を身柄確保する。

その時千葉県犬吠崎には例の「巨人」が上陸し、東京に向かいつつあった。
不審な一味、そして「巨人」の正体とは???



(警告!!以後ネタバレしますのでご注意ください!!)



ドクターSFらは拉致した男に記憶投影装置を装着し、事件の全貌の情報を得る。
彼らの正体はなんと「アトランティス人」だった。

かつての地球は先進的な「アトランティス人」とそれ以外の「野蛮人」が暮らしていたが、
「異星人」の侵略を受け、アトランティス大陸は壊滅…
その生き残りは脱出カプセル兼戦闘ロボである「巨人」に乗り込み、
深海で1万5千年にも及ぶ「冷凍睡眠」についた。

アトランティス人にとってみれば、自分らが眠っている間に
地球を横取りされていた形である為に、失地回復を要求していたに過ぎない。

ドクターSFは自製のタイムマシンを使い、過去に遡って冷凍睡眠のタイマーを操作し、
彼らの睡眠時間を倍の3万年に変えてしまう事で事態の収拾を図った。

「(未来へ禍根を残さない為には殺した方がいいのに)殺さないのか?」
という問いに対し、ドクターSFは「それまでには我が人類も
彼らと共存ができるくらいには進化しているだろう」と笑った。

最後に、ドクターSF達は「アトランティス人撤退後」の
過去の地球で起こった真実を目の当たりにする。
ジロウやドクターSFたちの先祖である「残された野蛮人」達は、
実は侵略者である「異星人」達に寄生されて進化した存在だったのだ!

ジロウは言う。「全員やっつけちゃえ!」
しかしドクターSFは答える「そうすれば我々が消えてしまうだろう…これは運命じゃ」

気が付くとジロウはいつものように空き地で野球に興じていた。
ドクターSFによってもとの時間に戻されたのだった。


【緋鳥記】

   



★入手状況(2003年12月現在)★

竹書房文庫版『ギルガメッシュ』は新品で入手可能。
『Sπ』は古本屋さんで1,000〜2,500円位です。

【緋鳥記】

                     


★ここがオススメ!!★

深い…実に深くハードな内容です。
中二特代という雑誌に 1965年4月〜66年3月号にわたって連載された作品ですが、
凄く深遠なテーマが内包されています。

ウルトラセブンに『ノンマルトの使者』という回がありますが、
地球人類が実は「侵略者」ではないのか?と問いかけるスタンスでは同じですね。

『アガルタ』や『番長惑星』『ギルガメッシュ』の源流ともいえる作品です。
ちなみに「巨人」の髪型は島村ジョウにそっくりです(笑)

【緋鳥記:評価★★★☆☆】

 

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