完結編を待ちつつ読みたい石ノ森萬画【とにかくオススメ!編】



『章太郎のファンタジーワールド ジュン』
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
(1967〜69年 COM連載/他)
メディアファクトリーMF文庫:全1巻/小学館文庫:全1巻/他


★ダイジェスト★

ガラスのように繊細な感性を持った漫画家志望の少年
ジュンの目を通して見た風景(或いはジュンの心の中、もしくは夢や幻想)
を、マンガという手法で描いた作品。

短編集という形を取っているが、文章に書けるようなストーリーはおろか、
セリフらしいセリフも殆どない。

石ノ森先生御自身が連載誌『COM』で語った通り、
『ジュン』は読者の感性に訴えるべく、文字ではなくマンガという形で描かれた
「詩」という言葉がふさわしい作品である。

【まつもと記】

         


★入手状況(2004年12月現在)★

新刊で購入可能:

 メディアファクトリー MF文庫 定価690円

 石ノ森章太郎ファンタジー画集 JUN 定価4,800円
 ジュンと代表的石ノ森キャラの競演イラストをオールカラー収録 必見!
 <問い合わせ先>
  ジェネオン エンタティンメント
  電話=03-5721-1380(月-金 10-12:00,13-17:00)土日祝は休業
  インターネット=http://www.geneon-ent.net/



入手困難:

 朝日ソノラマ B5判上製本(1993年発行)
 繊細に描き込まれている本作品は、文庫版だと鑑賞にツライ点もあり
 ぜひB5大紙面で前衛的な雰囲気を味わってほしいです… (復刻要望!)

 同時期に発刊された『魔法世界のジュン』朝日ソノラマ
 子供のジュンが愛犬と異世界を旅する<ジュン・童話バージョン>
 こちらも素晴らしい出来でお薦めします。

【人参のしっぽ記】




MF文庫で復刻されているので入手は比較的楽(注文可)だと思います。
古本だと1冊1,200円位。

【緋鳥記】

                                         
★ここがオススメ!!★

「月日は百代の過客にして
行かふ年も又旅人也」〈松尾芭蕉〉


では誰も体験したことのない旅へでよう
ここに一冊の本がある

タイムマシンも魔法の杖もいらない
あなたはただ頁をめくるだけでいい……

ファンタジーという夢みがちな概念を覆させる
あまりにも 広く  深く  遠い   世界

ここにきて深淵を覗いてみるがいい
否や応がなく あなたの扉は開かれるだろう

在る者は 壮大なる音楽が奏でられた といい
また在る者は 時空を一気に跳び越えていた という

何が聴こえ 何が視えるのか……
あなた以外知る術はないのだから

ここにきて深淵を覗いてみるがいい
たちどころに あなたの宇宙が現れるだろう


進みたまえ
奥へ  ずっと  ずっと  その奥へ……




……… ジュンが そこに居る。


【人参のしっぽ記:評価★★★★★】



                               


あの『漫画の神様』手塚治虫をして、その才能へのジェラシーを抱かせた作品。
ナイーブな永遠の少年ジュン…。彼こそが石森氏の分身…
そして度々登場する女の子は夭逝した姉上…。
叙情的でリリック… そして前衛的な作風が大好きです。

 illustrated by 緋鳥
ジュンと少女。         



抽象芸術や、現代アートを見て「これってどういう意味?」と言う方がいらっしゃいますが、
たとえ言葉に出来なくてももし、心に『何か』を感じる事が出来れば…
それぞれが感じた『何か』がその答えなのだと思います。

【緋鳥記:評価★★★★★】



                 


ジュンは、石ノ森先生の中にあるリリカルな感性が少年の形をとって表れた、
先生の分身なのでしょう。

この作品は「嫌いな人、判らない人には説明のしようもない」のですが、
『サイボーグ009』という作品や、その主人公島村ジョーといった、
私達を引きつけてやまない石ノ森作品とキャラクターの魅力は、
それらが内包する叙情性に負うところが大きいのでしょうから、
009のファンであれば、きっと『ジュン』の魅力も感じられるかと思います。

そう言った理屈抜きに、絵の美しさ(ジュンも、そして亡くなった先生のお姉さんの
分身と思われる少女を始め、登場するどの女性も何と美しいこと!)と
ページから漂う何とも言えない幻想的な空気に酔って下さい。

それにしても、『ジュン』をモチーフにしたときの先生のイラストは、
他の作品と比べても、何か恐ろしいほどの美しさを漂わせている様な気がします。

最近パイオニアLDCから出版されたイラスト集『ファンタジー画集ジュン』に
収録されたイラストも、どれも本当に美しく、私は同時期に出た『サイボーグ009画集』
と比べ、残念ながら「ま、負けたわ・・」とつぶやいたのでした(悔)

【まつもと記:評価★★★★★】



   


読むたびに、新たな視点に驚かされる作品。
もうだいぶ前・・・最初に読んだ時は、よくわからなかったんですよ白状しますと。
でも私『星の王子さま』も子供の頃は難しくてよくわからなかったし
でも今はマイフェイバリットになっていて。思うにこういう、説明が少なくて
読者にゆだねられる部分が大きい作品の方が、好きになったら長持ちしますね。

やはり早くにお姉さんを亡くされたからでしょう、石ノ森作品はかなしい話が多いです。
時には救われないほどのカタルシスもあります。
(死ぬ時はどうしようもなく死ぬんです。お姉さんがそうだったように・・・)

しかし「かなしみ」は、石ノ森作品の大きな魅力でもあります。
今回『JUN』を読み直してみて、作中何度も表れる不思議な少女が囁く
・・・消えないかなしみの“源”こそ「生きてるってことのしょうこなのよ」
というセリフに、何故自分が石ノ森作品に惹かれるのか、
理由がちょっとわかったような気がしました。
ナイーブでありつつ、結構シビア、でも眼差しは優しいんですよね。

次に読んだ時、果たして自分はどこに感じて、何を想うのでしょうか?
それが楽しみなような、怖いような・・・。

 illustrated by るな
半分捏造です(汗)
なんかこう〜〜〜ちょこっとこの、思春期の恥ずかしい
エッチな感じ・・・ってのがまた石ノ森作品の魅力かと(**)
それにしても。上のシーンも実はかなしいんだよね(涙)


【るな記:評価★★★★★】

 

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