完結編を待ちつつ読みたい石ノ森萬画【とにかくオススメ!編】


『龍神沼』
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
(1961年 少女クラブ掲載)
『石ノ森章太郎のマンガ家入門』(秋田文庫)等に収録/
メディアファクトリーShotaro World:全1巻/青林堂ネットコミュニケーションズコミック:全1巻/
朝日ソノラマ サンコミックス:全1巻/筑摩書房 現代漫画『石森章太郎』/他


★ダイジェスト★

東京に住む少年研一は、「龍神祭り」を見るために、とある(おそらく東北地方の)
村を訪れ、いとこのユミ達と一年ぶりに再会する 。

彼は、龍神がねむると言われる神社の沼のほとりで、白い着物を着た美しい少女と出会い、
心を惹かれるが、少女の正体は判らない。

そして、「龍神祭り」の当日、龍神の名をかたって村の乗っ取りをたくらむ
村長達の陰謀を知った研一とユミは、これを止めようとするのだが・・・・。

【まつもと記】

              


★入手状況(2003年12月現在)★

単行本での購入は困難

新書判:朝日ソノラマ サンコミックス
文庫判:講談社 文庫シリーズ

おすすめはメディアファクトリーのShotaro World版。福田淳一さんの解説資料あり。
特筆は最も初期での原形作品(7ページ)を記載。

新刊で購入可能

『石ノ森章太郎のマンガ家入門』に制作手本として収録:秋田文庫 定価590円

【人参のしっぽ記】



朝日ソノラマ サンコミックスだと2,500円、
筑摩書房 現代漫画『石森章太郎』なら1,500円〜3,000円程度…。

『石ノ森章太郎のマンガ家入門』(秋田文庫)に教材として収録されています。
こちらは新刊で注文可だと思います。

【緋鳥記】



翔泳社(P-PRESS)から10年前に出た『あかんべえ天使』という単行本がおすすめです。

冒頭に『龍神沼』が入っているのですが、ネットの古本屋でも常時600〜1,000円で買えますし、
原作者自身による各作品へのコメントが読めます。

何よりも他の収録作品がどれも初期の少女漫画の傑作なんですよ。
モノクロ版009でアニメ化された『金色の目の少女』も良いですが、
特に表題の『あかんべえ天使』は最後まで推薦作品にすべきか迷った名作です。
(ヒロインの「ヤッコちゃん」は暗殺者編の中の0013の所で出てくる女の子の原型キャラです)

【まつもと記】



★ここがオススメ!!★

わずか48頁の小品 『龍神沼』
しかしこの作品には石ノ森ワールドの原点が詰まっています。

都会からふと田舎を訪れた青年研一。沼のほとりで偶然にであう謎めいた美少女。
全般に広がる自然の美しさ。村人ら情景の生き生きとした表現。
そのなかで悪事を謀り利潤を得ようとする権力者たちの影。
かたや青年を慕い、初々しい恋心をみせる従姉妹ユミ。
思春期の微妙な心理描写にはただ感嘆するばかりです。

村祭りに出かけたふたりはやがて村の黒い疑惑に気づく。
ここで物語はサスペンス性を増しあわや殺されるかのときに少女が現れ、急展開。
怒りに満ちた少女の顔は気高くも凄みがあります。
懇願する研一、静かに水面へ身をひく彼女。
そしてオーラスは白く輝く龍の姿となる。

私にとってリュウとは昔境内で遊んだ神社、寺院にある奉納天井画の竜。
暗雲を背景に描かれたそれは、口は裂け目玉をむいてて怖かった。
竜の子太郎などの絵本を見てもあまり好きにはなれませんでした。
この作品を読むまでは嫌なイメージしかない生きものが
禿(かむろ)に花飾りの美しい龍神へと変わったのです、すごい。
It’s revolution!! How fantastic!
文句なしに石ノ森初期の傑作です。

【人参のしっぽ記:評価★★★★★】




寸分の無駄も無く、計算し尽くされたコマ割。現代にも通じる心理描写。
初期の最高傑作の名に恥じない名作です。

【緋鳥記:評価★★★★★】

illustrated by 緋鳥 
     龍神沼の少女。




石ノ森ファンというより、単なる『009』のファンで、『009』以外でも手に取る石ノ森作品は
専らSFばかりだった私に、石ノ森ファンタジー作品の素晴らしさを教えてくれた作品です。

コマ一つに至るまで綿密に計算され、映画的な演出や構図を多く活用した、
石ノ森作品中最も完成度が高いひとつで、名著『マンガ家入門』はこの作品を取りあげて
詳細に分析し、マンガ家を目指す多くの少年少女を刮目させた・・・・という辺りは、
マンガもイラストも描かない私には関係がなく、ただただ作品から溢れる幻想的な雰囲気と、
登場人物の繊細な心理描写にうっとり・・でした。

又、『となりのトトロ』を見たときと同じように、高度成長期前の日本の田舎の描写が、
何故かとても懐かしい。特に作品のクライマックスの背景となる、「龍神祭り」の描写が
素晴らしく、本のページからお囃子やたいこの音が聞こえてくるようです。

何度も単行本化され、入手困難な作品が多い初期石ノ森作品の中では、
比較的手に入りやすいと思うので、是非一度手に取ってみて下さい。

【まつもと記:評価★★★★★】



『夏目の目』ふうにレポしてみました!

【るな記:評価★★★★★】


illustrated by るな 



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