完結編を待ちつつ読みたい石ノ森萬画【完結編準備編】



『千の目先生』
★★★★★★★★★★★★
(1968年 ティーンルック連載)
双葉文庫:全2巻/朝日ソノラマ文庫:全2巻/他


★ダイジェスト★

2つの高校にはさまれた白鳩学園はごく平凡な女の子が集うどこにもある私立女子高校。
山城夏子もそんな女子高生、このところ彼女は苛立っていた。
隣の男子剣道部は女子をめぐり河原でケンカ(当然気があるから、ああ青春♪)
実はケンカの種は夏子が仕組んだものだった。

すると見知らぬ美人が近づき、鮮やかな手並みでその場を鎮めてしまう。
美女は千草カオル 新しく赴任してきた教師で来たばかりなのに皆の名前や事情を言うのだ。
不審におもい問うと、千草先生は微笑みながら答える。
「わたしは千の目をもっているから」

一同はミステリアスな千草先生に魅了され つけたあだ名は「千の目先生」
夏子はいぶかりつつも先生に惹かれてゆく…

千の目先生は本当になにもかも知っている。
夏子の家庭問題も、彼女が下宿青年 坂本三郎を好きなのも
そして夏子に不思議な力がついたことまでも 「先生 なぜあたしを?」

話変わり とある浜町「五本櫛町」誰もいない砂浜に長い髪の女、いや“人魚”がうちあげられていた!
この高校にも千草先生は現れる。そう先生は超能力者、しかし彼女の目的は何なのか。
静かな町は謎に満ちていた。「千の目先生」千草カオルの活躍がまたも始まる…

【人参のしっぽ記】

       


★入手状況(2003年12月現在)★

双葉文庫で復刻されているので入手は比較的楽だと思います。

朝日ソノラマ文庫(古本)だと初版で2巻セット1200円位…
『鋏』『青い馬』といった、かなりマニアックな内容の短編が収録されています。

【緋鳥記】



新刊で購入可能。双葉文庫名作シリーズ: 定価700円

【人参のしっぽ記】



朝日ソノラマ文庫収録の短編『青い馬』は、『ジュン』の続編とも思わせる内容。
テーマはズバリ“SEX”。『鋏』は自伝?・・・怖ろしくも哀しいです。

また、『Shotaro World』を編集された福田淳一さんの同人誌
『石ノ森章太郎研究叙説Vol.1』が『千の目先生』を特集しています。
通販などの詳細は↓のバナーからどうぞ。



【るな記】


★ここがオススメ!!★

『千の目先生』と『イナズマン』は『幻魔大戦/少年同盟』から派生した
姉妹編といっても過言ではないほど似ています。
お寺での戦闘シーンといい、勢力拡大の為、超能力者をリクルートするという
オーソドックスな手法は本当によく似ています。
千の目先生こと千草カオルは教師の傍ら、超能力者のリクルーターとして活動しており、
兄の名はサブロウといいます。
これまた『イナズマン』とおなじですね。

   千の目先生こと千草カオル illustrated by 緋鳥


『千の目先生』はまた、『 好き!すき!!魔女先生』の原作作となった事でも有名ですが、
それとは別に吾妻ひでお氏が『好き!すき!!魔女先生』のコミカライズを描いています。

【緋鳥記:評価★★★★☆】





1971〜1973年朝日・TBS系放映 ドラマ『好き!すき!!魔女先生』原作
[ドラマ設定 月ひかる先生(故 菊容子氏:おしくも放映後に早逝(T_T) )]
ドラマでは宇宙連合アンドロメダ星雲より派遣された平和監視員でアルファ星の王女
ときにアンドロ仮面に変身!! と、先生めいっぱいぶっ飛んでます(爆)
恋人の旗野真二は同僚教師で登場、森本レオ氏が演じられていました。
学園ドラマでありながら ウルトラマン80(懐かし)、金八先生、コメットさん
忍者ハットリ君などと類似点があり盛りだくさんで楽しい作品だったと記憶してます(^^)

原作英題がカッコいい『The Esper have thousand eyes』どうよ!
さて原作の千草カオル先生は 透き通る瞳が魅惑的な典型石ノ森美女。
カールしたロングヘアー スレンダーな容姿は品よくちょっとセクシー
こんな女教師、男子生徒なら毎日授業どころじゃない??(#^.^#)
そりゃ下宿先を覗くのも無理ないわ。
で当の先生はバシャマがピラピラフリル、ナイトキャップもバラてんこ盛り<おい
千の目センセったら… ;;;

この作品は物語2部に分かれています。ひとつは山城夏子に関して。
夏子宅の下宿人 イラストレーター坂本三郎がカオルの兄として登場します。
彼は『ミュータント・サブ』とほぼ同一キャラ(夏子の持つ洗剤パッケージに注目!)
三郎も混じえてUFOその一味との闘いが繰り広げられます。
そして浜町での人魚事件、ここでは松宮五月にかかわるもの。
千の目先生と五月の兄、松宮五郎との悲恋が哀しい…
千草カオルの相似キャラは『ワイルド・キャット』の“ネネ”
『アマゾン・ベビィ』の“ベビィ”があげられます。
こちらはハッピーエンドなので幾分救われます (~_~ゞ

【人参のしっぽ記:評価★★★☆☆】


                  



千の目先生こと千草カオルがと・に・か・く・美・人で、華麗な闘い方にはうっとり!
ただ美しいだけではなく、いかにも石ノ森的なコマ割の妙にゾクゾクします。
第1部のクライマックスシーンがものすごく好き...。

 illustrated by るな



同じく美人エスパーということで、筒井康隆氏の“七瀬”を思い出しました。
(ちなみに七瀬シリーズ『家族八景』は超名作です)

でも、テーマが超能力である以外は、ゼロナイ完結編と関連性はないかも。
エピソードの中で彼女がちょこっと登場してくれたら嬉しいかなー(*´`*)

完結編と関係なく作品だけの評価なら・・・もうひとつ★を追加します!

【るな記:評価★★★☆☆】


             



ヒロインが美しいんです〜〜〜! 以上、レビュー終わり。

ではなく、本作品も「新人類」「円盤」「超能力を持つ仲間達」という様々な
完結編的ファクターを含む作品で、しかも発表時期が『天使編』『神々との闘い編』の
直前なので、やはり重要作品の一つでしょう。

一応2部構成なんですが、オススメは第1部だけ。
敵方の正体とか細かい内容はさておき、全体的な暗い雰囲気は何とも言えない魅力・・
というか、石ノ森ヒロイン大好きの私が読むと、細かい内容より
ヒロイン千草先生の美貌ばかりに目が行ってしまって(爆)

千草先生は、この時期の繊細なペンタッチのお陰もあり、ホント〜に美しいです。
無粋な「防護服」をお召しになるどころか、私など走るだけで転びそうな
タイトミニスカートにハイヒールでひらりひらりと舞いながら闘われます。
決してスカートの中が見えるような、はしたないアクションポーズはおとりになりません。
石ノ森漫画の青年誌への移行時期のためか、他の登場人物も皆、大人っぽい。
私は青年「ミュータントサブ」に会えたのが嬉しかったです。

本来世に出るはずだった009の『完結編』は、本作品と共通した
暗い美しさを持つ作品だったろうと推察します。
その後の娯楽性の高い方向への作風転換によって、今となってはそのような
『完結編』は恐らく永遠に読めないのが残念至極です。

【まつもと記:評価★★☆☆☆】

 

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