『ギルモア研究所の経営危機』
from 青海亀さま










「ねぇ、みんな聞いてくれる?」

フランソワーズの言葉に全員が注目した。

「博士がいないから、ここだけの話なんだけど・・・」





「実はね、アタシがいつも研究所の経営状態をチェックしているんだけど、

ここのところ毎月赤字続きで、今の状態が続くようだと、わたしたちの活動に大きな支障が

出ることは間違いないと思うの。それでね、経費削減はもちろんなんだけど、

全員で協力して研究所の収入を上げる必要があると思うのよ。」



「まず、経費削減の件なんだけど・・・」



「ドルフィン号の私用は厳禁。飛行機はエコノミー、車のガソリン代は

公務としての証明がなければ認めません。

仕事でホテルに泊まるときも、なるべく低いランクのものを使用して下さい。

それから、みんなの飲食代他、いわゆる交際費なんだけど、

これからは職務との関連性をより厳しく確認するから。」



グレートとジェットが、そろって一瞬しかめっ面をした。

(オマエだってクリスマスにドルフィン号を使ったじゃねぇか!)

ジェットは心の中で呟いた。





「それから収入増の件ね。」





「ワテの店の売上だけではまかなえないアルか?」

「博士の特許料は入っているんだろ?」

「公的機関からの補助は受けられないの?」

張大人、ハインリヒ、ピュンマが矢つぎに質問を連ねてくる。






「それがBGとの戦闘や新設備の導入・維持に予想以上の経費がかかって、

それだけでは追いつかないのが現状なのよ。」

フランソワーズはやや伏目がちに答えた。




「ボクの編集ライターとしての給料はわずかなものだし、

今更レーサーには復帰出来ない・・・ジェットは?」





「オレも引退したようなモンだからなぁ、

アメフトのコーチや青少年のボランティアって言えば聞こえはいいけど、

まぁ事実上無職だしな。」


ジョーとジェットも物憂に答える。





フランソワーズは思い切ったように喋りだした。

「アタシね、本格的にモデルをやろうと思うの。

セリーヌの事務所の社長から好条件で誘われたのよ。

バレエのインストラクターや公演でもらえるギャラなんてたかが知れているし。」



その言葉を聞いたジョーは少々狼狽しながら

「ダメだよ、そんなの。ほらキミとボクが消費者金融の広告に出たことがあったよね。

あの時、みんなから徹底的に叩かれただろ。何より他の男たちがキミを見て・・・」



フランソワーズは顔を赤らめながら

「だけどね、前に言ったとおり背に腹は変えられないと言うか・・・

別に変なことをするわけじゃないし。」

「ダメ、ダメ。絶対に!」ジョーは怒ったような口調でまくしたてる。







今まで黙りこくっていたジェロニモがおもむろに語りはじめた。

「俺、実は日本で格闘家にならないかとスカウトされた。もちろん断った。

今日本では格闘技がブームで、スターになればビックマネーが転がりこんでくる。

アメリカで観光客相手にインデアンの踊りをするよりマシだ。」









6万人の観衆を煽るようにアナウンサーがヒステリックに叫ぶ。

「200X年12月31日、東京ドーム。今ここで60億人の最強の男が決まります。

王者であるウラジミール・ロゴスキーに史上最強の挑戦者が現れました。

わずか半年で日本の格闘技界を席巻したネイティブアメリカンの血を引く最強の戦士。

その名はワイルド・アパッチ、

人間と言う生物の歴史を越えた戦いの証人となって下さい。」




試合が始まるとジェロニモは相手を適当にあしらい、それなりの見せ場もつくり、

当然のごとく勝者の祝福を受けた。









「普段のジェロニモは虫も殺さない優しい男だからな。スポーツとはいえ辛かっただろうぜ。」

試合をテレビで見ていたハインリヒは、彼の気持ちを代弁するかのように呟いた。





その後、彼の活躍や経費削減の効果もあり研究所の経営は好転し、

ゼロゼロナンバー達の表情にも安堵感が漂いはじめたのであった。








 ←『ギルモア研究所の経営危機』イメージ図(ヲイ;)

あはははっ笑かしていただきました!
21世紀の日本で最も稼げるゼロゼロナンバー、それはジェロニモかもしれないっっ(^_^;)
ちなみに某消費者金融の広告ティッシュケース、しっかり宝箱(萬画クッキー缶)
にしまってありま〜〜〜す! 切ないでっす!!(泣)
青海亀さん、楽しくもシビアなSSをありがとうございました〜〜〜★





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