yakimochi

−原作『眼と耳編』より−
  by 繭さま




繭さんとのコラボレーション、第3弾!

『MAYUDAMA』さんのキリバンにニアミスしたので

(12009+2・・・ってニアミスと言ってよいものかどうか? でも実は、13009+1も踏んでたり^▽^;;)

お言葉に甘えて、いただいてしまいました! だって読みたいんだも〜んvv



今度は、例の『4つのお題』の3つめ。『眼と耳編』で、ジョーはいったいどこにいたのか?

我ながら、これはナイスなリクエストではないかと自負してますですvv

原作未読な方には???なエピソードかと思いますが、

繭さんがとっても分かりやすく書いてくださっているので、あえてここで本編の解説はいたしません。

では、はじまりますよ〜〜〜☆









「ユウジ…彼が?」

「ええ。どうやら彼は人の心が読めるみたいなの。」

「人の心が…か。なんだか、まるでイワンみたいだな。」

「そうなの。私達の事もさっと言い当てて…。」

「え?ボクたちの…なにを?」

「あ、ううん。なんでもないわ。それより、明日には戻って来れるんでしょう?」

「うん。これからすぐ戻るよ。…大丈夫かい、フランソワーズ。」

「大丈夫よ。心配しないで。ジョーの方こそ、気をつけて帰ってきてね。」

「ああ、わかったよ。博士やジェロニモにもよろしく。」



受話器を置いた後も、しばらくもやもやした気分が拭えなかった。



たまたま眼と耳のスイッチを入れていた時に、自殺をはかったユウジという男を助けたと

フランソワーズが話していたのが3日前。

ちょうどボクが博士のお使いでアメリカに着いた日の事だ。

ボクと入れ違いにジェロニモが日本にメンテナンスに行っているから、彼女の身に

危険は及ばないだろうとは思ってはいるけれど。



でも、なんなんだろう。restless、落ち着かない。なんとなく気もそぞろ。

フランソワーズの事だ、きっと彼に対しても仲間に対する思いやりの姿勢で

接しているんだろうな。





彼女が そばに いない。

ボクの知らない男が 彼女のそばにいる。

ただそれだけの事が、今日は妙にひっかかりを覚える。

こんなことは今までなかった。

とにかく、すぐにでも飛行機に乗ろう。



****************************



「おいおい、ジョー。折角こっちに来たんだから

たまにはもうちょっとハメをはずしたっていいだろうに。」

夕べの酒がまだ残っているのか、まだ寝足りないと言った風情で

ようやくジェットはリビングに現れた。

「ったく、お前ってどんなに飲んでも朝は早いし、電話はマメにするし

おまけにもう帰るっていうのかよぉ。」



「そりゃ、君と違ってここのソファで寝てりゃ、眼は覚めるよ。

このリビング、しっかり日が入るし、カーテンもないんだから…。」

「そりゃまぁ、今まで俺の部屋に泊まってソファで寝た奴はいないからな。

たいていは俺と一緒にベッドで…。」

「対象が違うダロ、ジェット。」

彼といると、こんな状況でも、つい軽口をたたいてしまう。



「で、ホントに帰るのか?ジョー。フランソワーズだってガキじゃないんだから。」

電話の内容はしっかり聞いていたらしく、ジェットは詰め寄ってきた。

「うん…。でもやっぱり帰るよ、ジェット。」

「まじかぁ〜。ジェロニモがいるんだから、そんなに心配する事ないだろ。」

「まぁ、そうなんだけどさ。でも…ちょっと。」



「まあな、なんだかんだ言ったって、お前はフランソワーズ命だからな。」

すこし呆れた様子で、ジェットは笑う。

「別に、そんなことは…。」

「妬いてンダロ、その男にさ。え、ジョーよ。」

的を得たりの表情で、彼はこう言い放つ。





妬いている…まさか?

しかし落ち着かないのは確か。一抹の不安と言ったところ…か。

「そんな、神妙な顔すんなよ。それとも虫の知らせってとこか。」

「うん…まぁ、そんなところかな。」

「急ぐのなら、俺が日本まで送っていってやるぞ。」

「いや、いいよ。空港までクルマ!で頼むよ。」



****************************



「やっぱりジェットに送ってもらえばよかったかな。」

機内食を下げ、ひと心地着くと、今度は経過する時間にイライラしはじめた。

まぁ、ここでじたばたしてもしようがない。

別に必ず何かが起こると決まった訳ではないのだから。



今朝のフランソワーズとの会話を思い出してみる。



「経過は良好よ。今日は散歩に出たのよ。」

「君と一緒に?」

「ええ。本当にジェロニモの言う通り、頭の傷を止血しただけで、

すぐに意識を取り戻したし、普通に会話できたわ。」

「ふ〜ん。で、何を話したの?」

「絵の勉強をしにパリへ行ってたって。その為に恋人を捨てたとも…。」

「…。」

「自暴自棄になって帰国して、そして自殺を図ったみたい…。」

「で、今は?」

「部屋に閉じこもったきり。食事も部屋でひとりで…。」

「大丈夫なのか?彼。」

「ええ…たぶん。ううん、違う。彼、どうやら超能力が…。」



たぶんフランソワーズは、自分が望んでもいない力を身につけた

ユウジに同情しているのだろう。

B.Gにさらわれて、サイボーグに改造された自分達の姿を彼に重ねて…。





その優しさが命取りなんだよ。

心に傷を負っている彼がそんなフランソワーズに心ひかれるのは

時間の問題なんじゃないか。



そこまで考えを巡らせている自分にハッとする。

ボクは何を考えているのだろう。

勝手にあの男がフランソワーズに好意をもつと決めてかかっている。

フフ…ばかだな。

でも、なぜか確信めいたものを感じる。不安…?まさか。



****************************



日本が近付いてきた。チャンネルをあわせ、なにか聞こえないか

耳に意識を集中する。

ボクから話しかけてみた方が早いか。



”ジョーなの?今、どこなの?”

”もうすぐ空港だよ”

”もう?早かったのね。迎えに行く?あ、でも今はちょっと無理かも。ユウジが…。”

”なにかあったのかい?”

”たいした事はないと思うのだけれど、今はひとりにしておけないわ。

博士達、コズミ博士のところにいっているの。もうすぐ戻ると思うけれど。”

”なら、いいよ。車を拾って帰るから。”



空港でイライラしながら荷物を受け取ると急いで外へ。

急がなくては。

ようやく車を捕まえてもこんな時に限って渋滞で進まない。

フランソワーズは今、あの男とふたりきり…。

イライラは募るばかり…。



”ジョー?今、ユウジが…!”

”え?どうした?”

”死んだ恋人が呼んでいるって…。ジェロニモも幽霊がいるって言うの。”

”わかった。すぐに向かうよ”



予感的中。

もうこうしちゃいられない。

車を降り、荷物だけ届けてもらうように頼むと、奥歯のスイッチを噛み締める。

そのとたん、かすれるような声でボクを呼ぶ声。

”ジョー!!”



”フランソワーズ、どうした!?”

”ワタシ…刺…された…みたい…。”

通信が途切れる。

何が起こった?フランソワーズ!!





加速をしているはずなのに、研究所までの道のりがすごく遠く感じる。

なかなかたどり着けなくて、自分自身にイライラする。

早く、早く、早く!!



****************************



「へいきじゃ…急所ははずれとる。」

博士の言葉にほっとしつつも、フランソワーズの顔から血の気はひいている。

許せない。

「いったい誰がこんな事を…チクショウ。」

まさか、あの男か!?



「出来た。」

そういうと、ゆっくりとジェロニモは立ち上がった。

手には木彫りの小さな像が握られている。

「幽霊はあっちだ。行こう、ジョー。」



****************************



遺体はあがってこなかった。



「超能力者を軍事的に利用しようとしている組織があったんだ…。」

海中に沈んだ彼等の魂を弔おうと、皆で崖までやって来ると

ボクはこれまでに調べた経緯を伝えた。

背後にはきっとNBGが絡んでいるに違いないだろう。





「ユウジ…前より幸福…」



フランソワーズとジェロニモの会話を聞きながら、

ボクは自分の度量の狭さに閉口していた。

これまでも、決して人の命を軽んじて行動してきたつもりはなかった。

でも、連綿と続く戦いの日々の中ではそうとは言えなかったかも…。

敵とはいえ、彼等一人ひとりにも愛すべき人はいたはずなのに。



今回のボクはただただフランソワーズの事だけしか考えていなかった。

ほんの一瞬ではあったけれど、彼女に触れるすべての人が許せなかった。

仲間とか、そんなことも関係なく、彼女を守るのは自分だけだという隔たった自負。



「…。」

「ジョー?」

いつの間に005の肩から降りたのか、003がボクの傍らに立っていた。

「003、ボクは…。」

なにも言わず、慈しむような微笑みでボクを見つめる君。

そうだ、失いたくなかったんだ。ただ純粋に君の事を。

「ジェットの言う通りだったな、今回は。」

「え、何の事?ジョー?」

「いや、こっちの事さ。戻ろうか。」



まいったな。あいつの言う通りだ。

ヤキモチを妬いていたなんて。








いい! いいっすよ〜〜〜〜〜繭さん!!

『ヤキモチを妬くジョー』めちゃめちゃツボです! ごちそうさまでした(-人-)

元々はフランちゃん視点なこのエピソードなのですが、やっぱ読みどころは

後半のジェラシーめらめらな9番さんだとかねがね思っておりました!!

(いつもとは形勢逆転・・・笑)

というわけでイラストも思う存分趣味に走らせていただきました。

繭さんほんとにサービス満点で大満足ですv ありがとうございましたvv

 


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